高度成長期に急増した日本の近代家族(都市型核家族)は、その後の高齢化と少子化など家族の新たな変動要因に直面することになった。
人口構造の高齢化については、2010年現在、すでに世界第1位の高齢化率の高い国になっている。国立社会保障・人口問題研究所の推計(2012年1月)によると、高齢化率(全人口に占める65歳以上の人口の比率)は今後も上昇し続け、2025年には30.3%、2050年には38.8%に達すると予測されている。今後日本は人類未踏の超高齢社会を迎えることになる。
この背景には、少子化の影響が指摘されている。1人の女性が一生(15~49歳)の間に生むと仮定される合計特殊出生率は、戦後、基本的に低下傾向にあり、人口が安定的に維持される標準的な人口置換水準2.08前後にははるかに及ばず、日本は確実に「少子化」による人口減少社会へと向かっていることになる。
少子化は年少人口の減少と老年人口の増加を通じて、経済社会に質的変化をもたらす社会の変動要因である。日本の年少人口(総人口中の15歳未満人口)対老年人口(総人口中の65歳以上人口)の割合は、1970年には23.9%対7.1%で、年少人口割合が高率であったが、2010年には年少人口13.1%対老年人口23.0%と老年人口割合が高率化している。国立社会保障・人口問題研究所の推計(2012年1月)によると、その後も2025年には、年少人口11.0%対老年人口30.3%、2050年には年少人口9.7%対老年人口38.8%と、年少人口の激減と老年人口の激増が予測されているのである。
このような社会の変化は、若年労働力人口の減少に伴う経済社会の活力低下や、急増する高齢者の年金・医療・福祉等の社会保障や社会福祉財源をどのように負担するかという問題、核家族化や一人暮らし高齢者の増加に伴う病気や障害、寝たきり、認知症など介護が必要な高齢者を誰がどのように介護するかという問題など、社会保障や社会福祉政策に関わる問題を提起している。また、個別家族の問題としては、高学歴化と女性の職場進出が進むなかで、仕事と家庭の両立をどのように実現するかという問題や、従来女性に特化していた家事・育児・介護などの役割を男女や社会でどのように負担しあうかという問題を提起している。
いずれにしても、少子高齢化のインパクトは、若年労働力人口に代わる新たな労働力として、女性の労働力化を推進する動きや仕事と家庭の両立支援を求める動きを生み出している。その一方で、女性就労は女性の低賃金労働やパートタイマー化を促進しており、国や地方自治体レベルで取り組むべき課題として、労働におけるジェンダー格差解消の問題が提起されている。
それとともに、少子高齢化の急展開は、近代家族のモデルとされた「男は仕事、女は家庭」という性別役割分業イデオロギーに激震を与えながら、結婚・出産。育児・介護を含めた新たな男女の共生と協働のシステムづくりの課題を現代社会に提起しているのである。
未婚化・晩婚化・晩産化
現代家族はどこに向かっているのだろうか。この疑問を解く鍵を、若年世代の結婚観や家族観、ライフスタイルなどに求めてみることにしたい。
表2-1に示されているように、若年世代の結婚動向は、未婚率の上昇や晩婚化(平均初婚年齢の上昇)、晩産化(第1子出生時の母の平均年齢の上昇)の方向へと向かっている。特に女性の晩婚化を契機に晩産化が進む現状が示されているといえよう。
独身男女の結婚意欲と個人主義的ライフスタイル
こうした現状を若年世代はどのように考えているのだろうか。国立社会保障・人口問題研究所「第14回出生動向基本調査(2010年)」によると、独身男女(18~ 34歳)の結婚の意欲については、「いずれ結婚するつもり」が男性86.3%、女性89.4%で、男女とも9割近くが「いずれ結婚するつもり」と答えている。平均希望結婚年齢については、男性は1987年の28.4歳から2010年の30.4歳へ、女性は同期間に25.6歳から28.4歳へと上昇しており、30歳前後までに結婚したいと考えている独身者の多いことが理解できる。
彼らの結婚していない(できない)理由(複数回答)については、18~ 24歳層では「まだ若すぎる」(男性47.3%、女性41.6%)、「必要性を感じない」(男性38.5%、女性40.7%)、「仕事(学業)に打ち込みたい」(男性35.4%、女性39.4%)等の理由が、25~ 34歳層では「適当な相手にめぐり合わない」(男性46.2%、女性51.3%)、「結婚資金が足りない」(男性30.3%、女性16.5%)、「必要性を感じない」(男性31.2%、女性30.4%)、「自由や気楽さを失いたくない」(男性25.5%、女性31.1%)等の理由が挙げられている。
これらの結果から、独身男女の9割近くは将来的には結婚するつもりであるが、相手がみつからない、資金不足等の理由に加えて、自分のしたいこと(仕事・学業等)や自由さ・気楽さを犠牲にしてまで結婚する必要性を感じないというような、個人主義的ライフスタイルが強まっていることがわかる。
また、内閣府「若者の結婚や家族観に関する調査」(2011年)によると、結婚を考えたときに気になること(複数回答)として「自分の生活リズムや生活スタイルを保てるか」(男性48.7%、女性60.5%)、「余暇や遊びの時間を自由にとれるか」(男性46.7%、女性51.1%)、「お金を自由に使えるか」(男性46.1%、女性46.5%)などが挙がっており、個人主義的ライフスタイルが結婚を考える際の暗黙の前提条件であることがわかる。
以上のとおり、独身男女の晩婚化の背景には、伝統的な性別役割分業観から脱却して自由な個人として生きたいという、家族形成原理における「家族の個人化」(山田2004)、「ライフスタイルの個人化」があり、 このような家族意識の変化が結婚先延ばし型の男女を生み出していることになろう。
