結婚には、大きく個人に対する機能と社会に対する機能の2つの働き(機能)がある。前者は、結婚が個人の役に立ち、個人の欲求をいかに充足するかというものである。後者は、結婚が社会の要求に対していかに貢献するかというものである。これら2つの機能は、たとえば、個人の欲求を満たす働きが社会の要求に応えることになるように、相互に関わりあっている。以下、結婚の、対個人的機能と対社会的機能についてその主なものを4つ取り上げてみよう。
第1に、個人に対する「性的欲求の充足」機能と、社会に対する「性的秩序の維持」機能については、先述したように、結婚により、性関係をもつことのできる相手は社会的に承認される。したがって、4国人の性的欲求は、結婚により満たされる。このことは、婚姻関係にはない男女の性関係を否定するという点で、社会における性的秩序の維持に貢献する。
第2に、個人に対する「子をもつ欲求の充足」機能と、社会に対する「新たな成員の補充」機能については、結婚によつて性関係が社会的に承認される結果、「生殖の正当化」がもたらされる(森岡・望月1997:45)。すなわち、先に述べた通り、生まれてくる子どもは嫡出性が付与されることで、社会において正当な地位を与えられる。
すなわち、自分の子どもをもち、その子を自分で育てたいという欲求は、結婚により満たされる。自分の子どもをもちたいという個人の欲求は、社会においては、新たな成員を補充し、世代の再生産を導くことになる。新成員の補充は、社会の存続にとつて不可欠であるから、 この意味で、結婚は社会に対して貢献しているといえる。
第3に、個人に対する「社会的地位の付与」機能と、社会に対する「社会結合の拡張」機能については、結婚は、個人に対しては、たとえば信頼性を与えるという意味で役に立つ。すなわち、一般に独身者と既婚者とでは、特に信頼性という点で社会の評価が異なるように、結婚により既婚者の地位を得ることは、一人前とみなされ、社会的責任を果たすことを期待されている。
一方、社会に対しては、結婚は、夫婦双方がかつて属した(定位)家族同士、また、双方の親族同士のつながりをもたらす。結婚が、たんに夫婦だけのつながりではないことを考えれば、このことはよくわかる。結婚による、家族間、親族間のつながりは、家族の孤立を回避し、 ひいては社会秩序の維持に貢献することになる(姫岡1976)。
第4に、個人に対する「人格安定化」機能と、社会に対する「社会の安定化」機能については、結婚による結合関係が、全人格的関係であることは先述したとおりであるが、 この全人格的関係は、夫婦相互の信頼関係を生み出す。したがって、個人にとっては、信頼関係に支えられた結婚生活が、個人の人格を安定させるのに役立つ。個人の人格が安定することは、結果的に社会の安定化に寄与する、 ということができる(執行1983)。
以上、配偶者選択と結婚をめぐっては、近年、さまざまな変化が現れてきている。たとえば、 インターネット上で出会いの場が提供されたり、 コンピューターを活用した見合システムが提供されたりするなど、配偶者選択のあり方も多様になっている。また、結婚という形態をとらないカップルや、同性同士のカップルもみられるようになってきた。配偶者選択や結婚形態における変化は、家族の多様化を今後さらに進めることになるだろう。
