離婚の増加
離婚の増加

戦後日本の離婚率(人口千人対)は、1947年の1.02からゆるやかに減少し、1963年の0.73が底となった。それから上昇に転じ1983年に1.51まで上昇し、再度減少し1990年まで1.3前後を繰り返した。このように戦後日本の離婚率は欧米に比べて低かったが、その理由として日本の夫婦は伝統的に伴侶性が乏しく、収入さえ入れれば「亭主元気で留守がよい」などといわれるように夫婦とも自律的で、ことさら夫婦関係に直裁な情緒的関係を求めていなかったし、さらに愛情がなくとも経済的安定のために家庭内別居をして、形式だけは夫婦関係を保つケースも多かったからといわれている。

ところが1991年に離婚率が1.37と再度上昇に転じ、2002年には離婚件数28万9836件、離婚率2.30と過去最高になった。以降やや減少傾向にあるが、2014年は離婚件数22万2107件、離婚率1.77である。

2001~2006年の間の離婚率は、日本は2.02で、米国の3.60に比べれば低いが、スウェーデン2.24、フランス2.09、オランダ1.91並みである(湯沢2012)。

現代の離婚の要因について、①女性の経済的要因、②離婚に対する価値観の変化、③ ライフサイクルの変化などが指摘されている。

①経済的要因としては産業構造や労働市場の変化に伴う女性の雇用機会の増加、児童扶養手当や妻の基礎年金の確立、離婚時の年金分割制度などの社会保障制度の整備により、女性の離婚後の生活がある程度確保されるようになったことが挙げられる。

②離婚に対する価値観の変化では、今日の離婚法の潮流は有責主義から破綻主義に向かっており、離婚をタブー視する傾向は弱まり、離婚イメージも失敗というより再出発という積極的な価値観へと変化している。

③ライフサイクルの変化では、人生90年時代ともいえる長寿化により、夫婦の婚姻期間が長期にわたるようになった。65歳以上の者がいる世帯の中で「夫婦のみ世帯」は1995年は304万2千世帯であったものが、2012年には633万2千世帯に増加している。同居期間別離婚件数をみると、1975年は結婚後5年以内が49.0%で、結婚後20年以上はわずか5.7%であつたが、2013年はそれぞれ34.6%と17.5%で、同居期間の長い中高年の夫婦の離婚が増加している(厚生労働省「人口動態統計」)。

さらに結婚35年以上のいわゆる定年後の夫婦の離婚件数は、1975年の300件が2013年は6106件と増加している。夫婦の婚姻期間の長期化に伴い、定年後の夫婦の生活変化に対応した夫婦の役割や勢力、情緒関係の再調整が課題となっている。

家族の多様化と個人化

現代は、平均寿命の伸長および出生児数の減少による「子離れ期」の出現や、高学歴化などによる女性の自己実現志向が高まってきた。またバブル崩壊後、1998年の金融危機、2008年のリーマン・ショックなど低経済成長が長期化し、雇用情勢が悪化してリストラ、失業率、非正規雇用が増加し、稼ぎ手役割を夫1人で十分に果たせる状況ではなくなりつつある。

景気が回復しつつある2013年の雇用者数は前年差47万人増で、6年ぶりに大きく増加したが、内訳をみると正規雇用者(3、294万人)は46万人減少し、非正規雇用者(1906万人)は93万人増加した。非正規雇用者の中では女性の40~54歳のパート・アルバイトが32万人と大きく増加し、就労理由は「家計の補助・学費等を得たいから」が一番多く、既婚女性の就労が一気に進行した(「平成26年版 労働経済の分析」)。高度経済成長期に標準化した性別役割分業型家族が減少し、2014年の共働き世帯は1077万で、専業主婦世帯の720万を大幅に超えた(『男女共同参画白書概要版(平成27年)』)。

1960~70年代の高度経済成長期は「夫は仕事、妻は家庭」という性別役割分業型家族と専業主婦規範が強く、政府は専業主婦優遇税制や年金の制度化を行ってきていたが、ついに第2次安倍内閣は「アベノミクス」の経済成長戦略の中で女性の活躍を重要な課題とし、2015年に「女性活躍推進法」を制定し、300人以上の企業に女性の職業生活における活躍を推進するための女性活用計画の策定と届出を義務づけた。政府の労働政策は、加速度的に進む人口減少社会への対策として、女性の労働力化へ大きく舵を切った。

また、現代は夫と同様に妻も職業や社会活動などに参加し、家族の集団生活の内外に個人の活動領域が形成され妻も「私」を主張するようになり、第2章でも述べられている「家族の個人化」が顕在化している。

現代社会の自己アイデンティティは、ェリクソン(B.H.Erikson)による1960年代の産業化社会に適合的な一元的に確立されるモデル(Erikson1968-1969)ではなく、再帰的で、多元的・複合的となってきた。若者の晩婚化・非婚化が進行しており、個人にとって結婚はライフコースの中の選択肢のひとつとして認識されるようになつている。既婚女性の自己意識も「家庭人としての自己」「職業人としての自己」「個人としての自己」などの多くの側面をもつている。子どもをもつ既婚女性の理想は、妻や母という「家庭人としての自己」を今より減らし、「個人としての自己」を増やしたいと答えている(柏木2001)。子どもが巣立った後は、夫の定年退職後に結婚という形を持続しながらそれぞれが自分の人生を楽しむ「卒婚」を希望する高齢者夫婦も増えている。

このような社会の変化と個人化の進行により、標準家族モデルとしての近代家族への規範的拘束が弱まり、現代の家族は、個々の家族の現実に即して使い勝手のよいものに変えながら、家族の枠組みを広げ、多様な家族の共存・家族のライフスタイル化が進行している。夫婦関係の多様化を示す現象として、事実婚、夫婦別姓、別居婚、卒婚、DINKS、離婚、再婚などがある。