ひとり親世帯・ステップファミリー・事実婚における親子関係
ひとり親世帯・ステップファミリー・事実婚における親子関係

これまでは、基本的に結婚した夫婦がそろって高齢期を迎えた状況を想定して親子関係を述べてきた。しかし、実際にはそのような夫婦・親子ばかりではない。そこでここではひとり親世帯、ステップフアミリー、事実婚についてみておこう。

ひとり親世帯

厚生労働省が実施している「平成23年度全国母子世帯等調査結果報告」に記されている母子世帯・父子世帯になった理由別・構成割合の推移を示した。理由別では母子世帯・父子世帯とも、死別の割合が減り、離婚の割合が増加している。

離婚件数は2002年をピークにその後減少しているが、高い水準で推移している。2014年の離婚件数は22万2107件であり、そのうち58.4%のケースに親権を行わなければならない子ども(20歳未満の未婚の子)がいる。旧民法下の戦前の日本では、離婚後の子どもは父親に専属するものとされており、戦後新民法になってもしばらくは、子どもは父親の「家」に所属するものと考えられていた(野沢ほか2006)。1950年から1965年までは、「夫が全児の親権を行う場合」の方が、「妻が全児の親権を行う場合」より多かった。これが1966年に逆転し、以降、「妻が全児の親権を行う場合」の方が年々多くなっており、2014年では「妻が全児の親権を行う場合」84.1%、「夫が全児の親権を行う場合」12.2%となっている。

ひとり親世帯の実際の生活において、親本人が困っていることを上記母子世帯等調査でたずねている。2003年と2011年を比較すると、父子世帯では「家事」の割合が大幅に減少し(34.6%→ 12.1%)、2011年の困っていることの上位は、母子世帯、父子世帯とも「家計」(母子45.8%、父子36.5%)、「仕事」(母子19.1%、父子17.4%)となっている。近年の不況や非正規雇用の増加などの影響が、父子世帯への経済的な影響を及ぼしていることがうかがえる。

ステップファミリー

「ステップファミリー」とは、全米ステップフアミリー協会(Step Family Associadon of America:SAA)創設者であるヴイッシャー夫妻が「一対の成人男女が共に暮らしていて、少なくともどちらか一方に、前の結婚で設けた子どもがいる家族」と定義している。親の再婚によって、子どもと親の配偶者との間に継親子関係が生じた家族がステップファミリーである(野沢2006)。

離婚の増加とともに再婚数も増加傾向にある。再婚数は1960年では夫8万4、094、妻は5万3、518だったものが、2014年には夫12万4、368、妻10万6、585、婚姻総数に対する再婚の割合は、1960年は夫9.7%、妻6.2%だったが、2014年は夫19.3%、妻16.6%と、大きく伸びている4)。先述したようにわが国においても離婚した夫婦の6割近くに未成年の子どもがいるということ、再婚が増加しているということから、ステップファミリーは一定数存在していると推定される。

ステップファミリーは、以前の結婚での子どもが妻/夫だけにいる場合、両方にいる場合、その子どもと同居している場合とそうでない場合、再婚したカップルに新たに子どもが生まれた家族とそうでない家族など、さまざまなパターンに類型化される。そして、このような多様性はあるが、ステップファミリーは「夫妻の一方あるいは双方がもっている親子関係が、新しい夫婦の関係よりも歴史が長い」という共通点をもっている。ステップファミリーの家族関係は血縁関係の有無や絆の深さが不均衡に配置された夫婦関係と親子関係、継親子関係の3つの組み合わせから出発するという点において、初婚家族やひとり親家族、里親家族と比較しても複雑といえる(野沢2006)。血縁関係の有無や絆の深さが一致しない関係性をもつ家族の実情を理解し課題を認識することは、家族の多様性の理解へと結びつくであろう。

事実婚

生まれてくる子どもの側からみると、欧米と比較して日本は婚外子の割合が低い。たとえば2008年の婚外子割合は、スウェーデン54.7%、 フランス52.6%、アメリカ40.6%などとなっているが、 日本は2.1%である(『平成25年版厚生労働白書』)。石井クンツ昌子は、欧米で婚外子の割合が高い要因としては、結婚に伴う法的保護や社会的信用が結婚していなくても与えられているという側面と、若者が未婚でも後先考えずに子どもを生めば何とかなる(国、社会が何とかする)という意識をもっている側面があるからだと述べている。さらに石井によると、育児を積極的に行う父親に焦点をあてた質的調査で、協働育児をするカップルの多くが事実婚であったという(石井2013)。婚外子の親がすべて事実婚カップルではないが、 日本で事実婚を選択するカップルは夫婦別姓を維持するという理由が多いと考えられる。民法の一部を改正し、選択的夫婦別姓制度の導入の検討もなされているが、「家族がバラバラの姓であることは家族の一体感を失う」などの反対意見もあり導入には至っていない。選択的夫婦別姓制度とは、夫婦が望む場合には、結婚後も夫婦がそれぞれ結婚前の氏を称することを認める制度。なお、民法等の法律では、「姓」や「名字」のことを「氏」と呼んでいることから、法務省では「選択的夫婦別氏制度」と表記している(法務省2016年3月11日取得、 http://www.mOJ.gOJp/MINJ1/minJi36html)。

夫婦別姓が子どもへ与える影響、事実婚ゆえの子どもを養育する上での不利益など多角的に捉えての検証が必要であろう。

これまで親子関係のうち、生活課題を中心に述べてきた。すると、それぞれのステージの生活課題とも親子のみで身につけたり、取り組めたりできるものばかりでなく、社会的に取り組む必要がある課題も多いことにあらためて気付く。さらに、今目的な課題として軽視できないのは、積極的であれ結果的にであれ、子どもがいないことにより親子関係が再生産されない事態が広がつていることである。三砂ちづるは、約10年前に、いまの30代、40代あたりは、親世代から「結婚しなくてもいい、子どもなんか産まなくてもいい」というメッセージを受けていて、妊娠出産、子育てに肯定的なイメージをもてていないと指摘した(内田・三砂2006)。親子問題のネガティブな部分に光を当てることは、問題に対する認識を広めるという意味では必要なことであり、認識の共有が問題解決への第一歩になる期待へと続く。しかし、 ネガテイブな部分ばかり強調されてしまうと、 人は(生殖)家族をもつことをためらってしまうかもしれない。

ハロウェイ(S.D.Holloway)は、日本の母親たちは子育てに高い水準を求めるがゆえに子育てに疲れていること、子育てに関する古い文化モデルと新しいモデルとの間には対立や不一致があり、そのことが、女性が自分の行動を振り返り自分自身の基準で自己評価しようとする際に、不安やストレスを感じさせることがあると述べている(Holloway 2010=2014)。落合恵美子は、今日、子育てがうまくいっていないようにみえるのは、子どもの成長に関わるネットワークが変動しつつあり、その再編成がスムーズに運んでいないからで、親族や地域、公的援助などを柔軟に組み合わせて、時代の社会的条件に見合った新しい育児のあり方の模索を提案している(落合2004)。

人口減少などから、学校の統廃合や行政サービスのあり方の変更、地域社会の変容はこれからもありうる。その中で自身が行っていることが適切かどうかを判断するための、信頼できる道じるべがほとんどない状態で、今後、ロールモデルもないまま、人びとはそれぞれのライフステージを迎えることも予想される。異なる古いモデルと新しいモデルとの間でストレスや葛藤も生じるだろう。好むと好まざるとにかかわいず個々人の選択の集積体として、時代ごとにどのように特徴づけられる親子関係が現れるのかを注視していく必要がある。