家族の分類
家族の分類

マードックの研究は、家族の分類に関しても有用である(Murdock 1949-1978)。マードックは人間社会に関する多数の比較文化的なデータから、夫婦と未婚の子どもからなる核家族(nuclear family)が、単一で存在するにせよ、複合して存在するにせよ、人間社会にあまねく認められる家族であるとした。核家族は主要な家族関係、夫婦関係と親子関係を各1つずつもっている。核家族が複合してより大きい家族単位が形成される場合、夫婦関係が複合して構成されるのが、「複婚家族」(polygamous famlly)、親子関係が複合して構成されるのが「拡大家族」(extended family)である。

複婚家族は一夫多妻や一妻多夫の家族であるが、欧米諸国や日本をはじめとして世界の多くの国々で家族制度上認められていないものである。拡大家族は、 跡取りだけは結婚後も親夫婦と同居し続ける「直系家族」(stem family)と、跡取りだけでなく次男以下も結婚後親夫婦と同居する「合同家族」joint family)とに分けられる。戦前の日本の家族制度で規定されていた「家」は直系家族にあたる。

今日においても、日本においては、直系家族の構成を示す家族が少なからず存在している。合同家族(複合家族と呼ぶ場合もある)は、かつての中国やインドで制度が認められたものである。一夫多妻の複婚家族は、イスラム教(回教)圏の国々などで現代でも社会的制度として認められている。しかし、そのような国々でも実際に一夫多妻の婚姻形式をとるのは、おおむね、当該社会の一部の階層の人たちに限られているといってよい。日本の直系家族としての「家」では、跡取りの長男だけでなく、次三男も結婚後、親夫婦と同居するケースがみられることがあったが、次三男の家族の同居は原則として分家の条件が整うまでの一時期であった。したがって、日本では合同家族という制度は実質的に存在しないとされる。

これらの家族様式はそれぞれの社会が置かれた歴史的な背景の中で、政治、経済、社会、文化的な制約を受けながら出現してきたものである。近代以降の日本の家族をみてゆく際には、拡大家族のうちの直系家族と核家族など2つの分類を軸とすればよい。家族変動との絡みでいえば、近代化の過程で核家族が一般化してきた。

しかし、農業や商業などが家業として営まれている場合には、家業の世代間の継承のためには、直系家族が適している。孫からみて祖父母のいずれかが欠けている直系家族、片親だけの核家族などはそれぞれ、直系家族の欠損形態、核家族の欠損形態ということになる。核家族は、大きな家族単位(複婚家族や拡大家族)から解放されて、それ自体で存在する場合、夫婦家族(con]ug」family)とも呼ばれる。家族類型との関係でいえば夫婦家族というべきである。とりわけ、近代化の過程で一般化してきた核家族について、そのことがいえる。

なお、家族構成の分類については、家族の生活周期について注意しておくことも必要な場合がある。たとえば、直系家族であっても、生活周期のある時期(祖父母が亡くなり、跡取りが未婚の時)には、核家族の構成を示すことがある。核家族の構成を示していても、家族制度からみれば直系家族である場合があるわけである。

家族の類型
類型は単なる分類ではない。家族形成規範のあり方から理念型(ideal type)として構成されたものである。直系家族と夫婦家族(核家族)についてみておこう。

直系家族制(stem family system)

跡取りだけは結婚後も親(夫婦)と同居して、累世代的に家族を直系的に継承してゆく。跡取り以外のきょうだいが結婚後も、 親夫婦とまれに同居することがある。しかし、それは分家あるいは他出するのが原則で一時的なものに過ぎない。跡取りからみて、自分が生み出され育てられた親の家族を定位家族(family of orientation)、自分が親となって子どもを育ててゆく家族を生殖家族(family of procreation)と呼ぶが、直系家族は跡取りを連結者として定位家族と生殖家族とが連鎖して形成される。親の社会的地位・財産、祭祀は跡取りによって独占的あるいは優先的に継承され、家族の直系的な通世代的再生産の基礎となる。跡取りを男子に限定したり、優先させたりする場合には、フォーマルな親族は夫方に偏った構成をとることとなる。
この類型の家族は、生活基盤が、農家や商家などに多くみられたように、家業経営に置かれているような社会と、そこでの家族に適合する。直系家族は家業の継承を確保することを容易にするからである。その性質上、親子の世代間扶養を容易にすることはいうまでもない。

夫婦家族制(conjugal family system)

夫婦家族制度下の家族の典型としては、夫婦の結婚によって形成され、死亡によって消滅する一代限りのものである。子は成長にしたがって、就学、就職、結婚などの人生の転機のいずれかをもって親元を離れてゆく。親の生殖家族(子からみれば定位家族)と子の生殖家族は、それぞれ別の生活単位を構成する。しかし、一人暮らしになった親が子の家族に身を寄せることはある。親族は夫方妻方のいずれにも大きく偏ることなく双系的に広がる。財産・遺産等は子どもの間では均分に相続される。
この類型の家族は、人びとの移動性に富んだ社会に適合する。労働力の地域間移動が激しい近代以降の社会には殊に適しているといえよう。思想的には個人主義的な背景をもつようになるといってよい。親子の世代間扶養は期待しがたい面がある。
この類型の家族が安定的であるためには、ある程度の所得水準と社会保障・社会福祉などの制度の支えが必要である。